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最高裁判所第二小法廷 昭和63年(行ツ)140号 判決 1991年2月22日

上告人

オリエンタルモーター株式会社

右代表者代表取締役

若林昭八郎

右訴訟代理人弁護士

中町誠

被上告人

千葉県地方労働委員会

右代表者会長

新垣進

右参加人

全日本金属情報機器労働組合東京地方本部オリエンタルモーター支部

右代表者執行委員長

大池良三

右訴訟代理人弁護士

藤野善夫

後藤裕造

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中町誠の上告理由第一点及び第二点について

原審の適法に確定した事実関係の下において、上告人が参加人組合所属の組合員に対し仕事上の差別取扱いをしたことが労働組合法七条一号及び三号所定の不当労働行為に該当するとした原審の判断は、結論において是認することができる。所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。論旨は、帰するところ、原判決の結論に影響を及ぼさない事項についての違法をいうものにすぎず、採用することができない。

同第三点について

本件救済命令の主文第二項のポストノーティス命令は、被上告人によって上告人の行為が不当労働行為と認定されたことを関係者に周知徹底させ、同種行為の再発を抑制しようとする趣旨のものであって、掲示を命じられた文書中の「深く陳謝する」との文言は措辞適切さを欠くが、右は同種行為を繰り返さない旨の約束文言を強調する趣旨に出たものというべきであり、上告人に対し陳謝の意思表明を要求することは、右命令の本旨とするところではないと解される(最高裁昭和六三年(行ツ)第一〇二号平成二年三月六日第三小法廷判決・裁判集民事一五九号二二九頁参照)。してみると、右命令は上告人に対し陳謝の意思表明を強制するものであるとの見解を前提とする憲法一九条違反の主張は、その前提を欠くというべきである。また、原審の適法に確定した事実関係の下において、右命令が、被上告人に認められた裁量権の範囲を逸脱したものとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官香川保一 裁判官藤島昭 裁判官中島敏次郎 裁判官木崎良平)

上告代理人中町誠の上告理由<省略>

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